うちは結婚してもう何年だろう?まだ子供はいない。
夫婦とも30代も後半にさしかかり、子供を望むとなればもう30代は高齢出産ということになり不妊治療ってことになってくるみたいです。
みたい、というのはどうしても産婦人科というところは女性主体なんですよ。子作りは夫婦の協力が必要だとは理解はしていても。それじゃいけないんでしょうが。
まだ不妊治療を本格的に始めているわけではないです。
本格的な治療(人工受精やら、体外受精やら)となると費用も高額なものになるし、何より肉体的、精神的に負担がかかる。特に女性には。
で、その前段階として精液検査に行った話。
まあ、あまりにデリケートな問題だし、知り合いで行ったなんて聞いたことないし、それなら知りたい人も少しはいるんじゃないかと思いまして。
精液検査ってのは勿論精液が正常かどうか、運動率はどうかとか、奇形率がどうとかそういうことを見るわけですが、いろいろ面倒でして禁欲期間を2日以上開けてしかも7日以内に採取しないといけないらしいんです。で、今回がちょうどそのタイミングだったわけで行ってきました。
今更、病院で恥ずかしいとかいう年でもないですよ。
受付は若い女性看護師さんばかりで一瞬入るのにためらったなんてことは勿論ない。
受付で
「精液検査で来たんですが・・」というと
淡々と受け付けてくれまして
「(精液は)持って来られましたあ?」と聞くので
「いや、・・」
「じゃあこちらで採取ですねー」
と明るく対応してくれまして、
そのまま受付にいた中でも一番可愛らしい看護師さんが
「こちらです」と採精室(っていうんだ、初めて知った。)まで連れていってくれたのも当然恥ずかしくなんか無かったし、なんならちょっと興奮したなんてことも決してないですです。
部屋に入るときにこまごまとした説明とともに精液を入れる検査容器が入った紙袋を渡された。
病院の中でも一番奥の方にひっそりと採精室(部屋の表にはそんなこと書いてません、何かの倉庫みたいな感じ)はあって、中には小さなベッドと謎のテレビとDVDプレーヤー。
謎でもなんでもなく採精用なんですけども。
この辺の説明はないんですがそこは阿吽の呼吸というかなんというか。
「アレを再生しながら、採精しろってか」と独りごちる。
小さな本棚もあって、漫画、雑誌、小説も置いてあります、無論あっち系のもの。
よりどりみどり、選びたい放題。シュールだ、なんともシュールな世界だ。
先ほど渡された紙袋には検査キットと「採精室用DVD(6枚)」と書かれたDVDケースも一緒に入っていた。わざわざ枚数を表示する意味はあるのか?とケースを開けると中には6枚どころじゃなく15枚ほどのDVD。まあなんというかサービス精神旺盛な病院ですね。それにしても活字あり、映像あり、写真ありと採精には困らないだけのものが用意されているのは結構だけど、これだけあると迷っちゃうよな。
でもこの品揃えは誰のセレクトなんだろう?一個一個列記していきたいくらいですが割愛。
まさか院長自ら「やっぱり素人ものも必要だな」とかやらないと思うし。
それとも看護師会議みたいなので婦長が決定するのだろうか?
うーん、なかなか興味深い。
でまあ、迷った(迷うなよ)挙句ネタを選んでいざっ!ってことなんだけど、やっぱりなんとなーくやりずらい。こういうシチュエーションに逆に興奮する人もいそうだけど。
部屋の外からは赤ちゃんの泣き声も聞こえてくるんですよ、産婦人科だから。
汚れなき生命の産声を聞きながら、イケないDVDを見て行為に及ぶのはなんとも言えない気分ですよ、なかなか。味わい深いとまでは言いませんが。
無事採精して、受付に持って行って本日は終わり。結果は後ほど。
ちなみに家で採取して、数時間のうちに持って行ってもいいそうです。病院ではチョット・・という方はおうちでどうぞ。
僕には家に妻がいる中、トイレかなんかでコソコソっとやって、「じゃあ、ちょっと持って行ってくるわ」ってやる方が恥ずかしいように思えたので病院を選択しましたが。
それにしても若い頃、まさか自分が病院で採精することになるなんて夢にも思っていなかったな。人生は未知なる経験の連続なんだ。まあ自分に子供ができるかも(まだできていないけど可能性として)と想像したことすらなかったわけで。自分勝手に自分のことにしか興味を持たず生きてきたからなあ。それは今でもあまり変わっていないか。だから結局自分勝手に生きてきた結果として今こうして不妊治療ということになってしまったんだろうな、とも思う。それについては完全に僕のせいだ。妻には申し訳ない。
それでも尚、(こんなことを言っては子供を作りたいのにできない方たちに怒られてしまうかもしれないけど)子供を持つ自分というのがうまく想像できない。
勿論子供が欲しくないわけじゃない。でもそれは消極的肯定というか。現状、子供を作りたい一番の理由は自分の為というよりかは、親に孫の顔を見せてやりたいという気持ちの方が強い気がする。それは子供を授かりたい真っ当な理由になるのかどうか自分にはわからない。
とはいえ、残酷に時間は過ぎていき、子供を作れるチャンスもどんどん少なくなっていく。決断はもう成され、不妊治療はもう始まってる。