先日、村上春樹さんの期間限定サイト「村上さんのところ」が公開終了となってしまいましたね。
「村上さんのところ」では村上さんへの質問に村上さん自身が答えるという
著者と読者が直接やり取りできる貴重な機会でした。15日間で37000を超えるメールがあったようです。
僕もメールを送りたかったのですがいつの間にか質問の受付は終わってしまっていて残念でした。全部ではないですが読者と村上さんのメールのやり取りを楽しく読ませてもらっていました。
村上さんの好きなヤクルトスワローズの自虐風応援とか、ジャズレコードのコレクションの話とか、執筆するオフィスのデスクまで紹介されていたりと、普段小説を読んでいるだけでは見ることのないものがたくさん見られて楽しかったです。
追記:書籍化もされましたね。勿論僕は購入。とっても長いので、暇つぶし的にちょっとづつ読んでいます。
村上春樹さんの文体って癖になるらしく、サイトでその文章を読んでいるうちに無性に本を読みたくなりまして、「1Q84」と「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を続けて再読しました。やっぱり面白い。
初読の際はどちらの作品も楽しく読ませてもらったものの、昔からの村上主義者(ハルキストではなく)としては、過去の作品が好きすぎて「ちょっと物足りないかな」と思わなくもなかったです。でもこうして改めて再読してみると、いやいやどちらもそれぞれに味わい深い作品だと感じました。
僕の選ぶ読んでおくべき村上春樹作品 長編小説ベスト5をランキング
そんなわけで僕が選ぶ村上作品、なかでも長編小説から好きな読むべきベスト5を勝手にランキング。
村上さんの本は長編に限らず短編もエッセイも面白く、またその面白さの方向がだいぶ違いますので今回は長編に限って選んでみたいと思います。
では早速1位から。
村上春樹のおすすめ長編小説 ランキング第1位
「ねじまき鳥クロニクル」。僕の選ぶベスト1は何と言ってもこれ。僕のブログ名、「僕ロニクル」はここからつけさせてもらいました。
長編において村上作品を2つに分けるとしたら、間違いなくそれはこの「ねじまき鳥クロニクル」が境界線だと思います。
「ねじまき鳥」までとそれ以降では全く異なった印象を持ちますが(その転換のきっかけはよく言われることですが、阪神淡路大震災とオウムの事件)、その前期村上作品の頂点、一つの完成形がこの「ねじまき鳥クロニクル」。
村上作品ではよく人が姿を消すのですが、この作品もやっぱりそうです。ある日突然姿を消した妻を「僕」が探す、というのが一応のストーリーなのですが、クロニクル(年代記)の名の通り、過去から現在へとリンクする壮大な物語。
もう色々な登場人物の様々なエピソードが多すぎて、はっきり言って難解です。答えのないものも多い。でもそれでいいと思うし、だからこそ何度も楽しめる。
楽しめるといっても、ハッピーな話ではないし、テーマとしては非常に重苦しく、なかには残酷なシーンもあったりしますので(またその残酷な描写が秀逸なんですが)、体力のあるときに気合を入れて読んでください(笑)
この小説は夏が向いてる気がします。暑い夏に是非どうぞ。
村上春樹おすすめ長編小説 ランキング第2位
「国境の南、太陽の西」
長編というには少し軽めの中編といったところですが、こちらも大好きな作品。もともとはねじまき鳥クロニクルのなかの一つのエピソードだったそうなんですが、村上さんの妻陽子さんのアドバイスで、そのなかから削り、そのエピソードを一つの小説として仕上げたのがこちら。
ねじまき鳥とは話になんの関係もないので、どちらから読んでも構わないですよ。
何不自由なく暮らしている(あるいは何不自由ないと思っている)主人公の僕(ハジメ)が、小学校の頃すごく仲良しだった島本さんという女の子と再会するのですが・・・と言った感じのあらすじ。
しかしあらすじって書くのが難しいですね、あんまり内容を書いちゃうとネタバレしてしまうし。小学校の頃仲良しだった二人が、中学に上がると次第に疎遠になっていった・・そして再会。
というとなんとなく1Q84にも通じるテーマがあるのかもしれません。
とにかく、スタイリッシュ。文章自体も、物語の舞台も。時代的にもバブルの香りがします。でもその表面上のスタイリッシュさのなかに潜む、幻想とか喪失感みたいなものがうまく出ているなーといった感想ですかね。
映画化されたら面白い作品だと思ってましたが、実際に話があったみたいですね。
巨匠監督×村上春樹実現せず、「国境の南、太陽の西」映画化の話があった。 | Narinari.com
今回は実現はしなかったですがいつか観てみたいなあ。
とにかく軽く読めるのでねじまき鳥を読むほどの時間も気力もない、という方はこちらから手始めに。
村上春樹おすすめ長編小説 ランキング第3位
15歳の少年カフカと猫と会話のできる老人ナカタさんという2人の物語が交互に展開される。カフカは家出をし、高松の図書館を目指す。ナカタさんもまた西を目指し旅に出る。
それぞれの話が交互に展開し、微妙にリンクしあっているという手法は、このあとに紹介する「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」でも使われているもので、ちょっとずつ核心に迫るドキドキ感が楽しい。
15歳の少年が主人公ということでどうかな?とも思ったのですが面白く読ませてもらいました。でもあんなにしっかりした15歳はいないですよ(笑)村上さんってあんな感じの少年だったのかな?
他にも老人であるナカタさん、いつも中日ドラゴンズの帽子をかぶっているハイテンションな星野青年など今まで村上作品には登場しなかったタイプの異色のキャラが多く出てきて新鮮な気持ちでした。
村上春樹おすすめ長編小説 ランキング第4位
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 全2巻 完結セット (新潮文庫)
- 作者: 村上春樹
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もう世界観が最高。前述したように2つの世界の物語が交互に進んでいきます。
そして結末は・・・。
僕が初めて村上作品で面白いと思ったきっかけの本かもしれない。計算士、やみくろ、夢読み、一角獣・・・あーどれを取っても素敵です。洒落てるなー、と。
久しく読んでいないけどまた読みたくなってきたな。村上作品を読んだことのない初心者には一番のおすすめかも。村上ファンの間でもたしか人気の作品の一つだったと思います。
ねじまき鳥とは対照的にこの小説は晩秋から冬にかけて読みたくなります。静かな夜にウイスキーでも飲みながら。
村上春樹おすすめ長編小説 ランキング第5位
これはもう、最近読んだばかりなので多分にひいき目なセレクトですが。
「プラトニックな恋愛」と「カルト教団という大きな闇」という全く異なる2つのテーマが重なり合うとこんな小説に。タマルのなんとかしてくれそう感は異常。あと、過去の意外な人物が主要キャラとして復活。ファンにはたまらないですね。
長い長い小説を読みたい方には是非。
追記:果たしてBook4あるいはBook0の新作はあるのか?
村上作品勝手にランキングまとめ
というわけでベスト5を選んでみました。まあでも、ここに選んでいない作品のどれも充分に面白いです。
また、初めて読んだ時と何回も読み直した後では印象が変わるものも多いです。「ねじまき鳥」なんかはまさにそうで、初めての時はそれほど面白いと思ってなかったものが、今では僕の中ではベストな作品となりました。自分の読む年齢、精神状態なんかでも大きく違ってきますしね。
ノーベル文学賞候補になるなどあまりにメジャーになりすぎて、賛否両論というか評価が激しく分かれる作家になってしまいました。村上春樹が好きなんて言おうものならミーハーで本当の文学ファンではないみたいに思われかねない風潮すらあったりします。
でも、読み込むと本当に魅力的な作品が多いと思いますけどね。基本的にはどれも平易な文章で書かれていて、誰にでも取っつきやすいけれど、反面ジワジワと味わい深く奥が深い作品が多いんじゃないかな。食わず嫌いの人は是非試してみてくださいね。
ノーベル賞についてはここ数年いつも候補になっていますが、受賞しようがしまいが、作品の良し悪しが変わるわけでもないのに毎年毎年騒ぎすぎなんじゃないかと個人的には思ってます。
村上春樹新作長編小説はいつ発売?
長編小説はここ最近は大体3〜4年間隔のスパンで出版されています。「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」が出版されたのが2013年4月。とすると2016年あたりかな?
でもこれは来年には出版されたら嬉しいなという一ファンの希望的観測です。ここ最近まで限定サイトでメールのやり取りをしていて、「その他の仕事は一切できない」とご本人が述べられていましたので、現在全く新作は書かれていないでしょうね。
おそらく少し休憩して本格的に新作にとりかかったとしたら、今から少なくとも2年。2017年から2018年くらいが現実的な予想でしょうか?うーん、待ち遠しい。
あと何作品、村上春樹さんの小説が読めるのかわかりませんが、もうそれほど多くはないのも残念ながら事実。是非是非、より多くの作品を世に送り出してもらいたいです。
こうして今回まとめていたら、また読み返したくなってきました。長編も素晴らしいですが、短編もまた素敵な作品が多いのでまた別の機会に自分の記憶の整理も兼ねて勝手にランキングを作ってみたいと思います。
村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』をどう読むか
- 作者: 河出書房新社編集部
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/06/22
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