人はなぜ、30歳を過ぎると仏像が好きになるのか?
秋ですね。見仏には最適なシーズンが到来です。僕自身は最近見仏旅行に行けていませんので本でも読んで少しでも見仏欲を満たそうかなと。
ところで「見仏」ってなんだ?という方もいらっしゃると思います。
見仏とはいとうせいこう、みうらじゅんの二人が仏像を「見仏」してああだこうだと、ユルイ感じで旅をすることから始まったものです。テレビでも京都チャンネル時代から「TV見仏記」、書籍でももう何冊も出版されています。
テレビはその後関西テレビに移り、今なお続いていて(残念ながら関西在住ではないのでリアルタイムでは観ることができないのですが)、いまでは4Kでの撮影もするという無駄にハイスペックな番組へと変わりました。DVD、Blu-rayも売れていて、イベントを開けばチケットは即日完売ともはや一部のコアなファンだけのものではなくなりました。
興福寺阿修羅像の大ブームや、奈良平城京遷都1300年での一連の仏像ブームの火付け役でもありました。元々は仏像を拝観することを「見仏」などというちょっとふざけた言い回しはけしからん、ということで撮影を断られるお寺もあったようですが(多分今でもそういうお寺はあるんじゃないかな?)、今では二人が来るのを待ち望んでいるお寺も多くなったようです。
そんな僕も書籍の方の「見仏記」から入ってすっかりハマってしまった一人です。
というわけで見仏記というゆるいスタイルから仏像鑑賞に入った僕ですが、「美術的に正しい」仏像の見方なんて言われてしまうと、ちょっと勉強してみようかと気になってしまいます。
一読しましたが、美術批評家の方が書かれたものなので、難しいかな?とも思ったんですが、そんなことはなくむしろこれから仏像鑑賞をしたいという方にはピッタリのガイドかもしれません。鑑賞「入門」と書いてある通りでした。
ではそんな本書から、僕のおすすめする行ったお寺、行きたいお寺などを少しピックアップ。
奈良 興福寺 国宝館
まず第一章のはじめに紹介されているのが、奈良・興福寺の国宝館。まさに僕もこの国宝館へ行ったことが見仏ファンになったきっかけでもあったので嬉しくなりました。やはりまずはここからだろうと。
嫌でもここへ行ったら誰でもその圧倒的な仏像群には魅了されると思いますけどね。あの仏像界の大スター「阿修羅像」もここに。
ちなみにこの国宝館は平成22年にリニューアルされていますが、その前は結構古い収蔵庫に雑然と置かれていました。その雑多な感じも僕は好きでしたけどね。でもリニューアルされて今はとても綺麗なミュージアムになりました。阿修羅像をはじめとした乾漆八部衆立像も以前のガラス張りではなくなり、観やすくなりました。
ところでこの国宝館、また耐震工事のために来年一年間休館だそうです。行くなら是非今年のうちに。
1年間休館、長い。その前に行こうかな。それにしても去年行ってからもう1年ほど経つのか https://t.co/oVSaugEzZ5
— ziiico29 (@kjstak30529_d) October 3, 2016
興福寺は国宝館だけでなく北円堂、南円堂と見どころばかりの大伽藍。ぜひ時間をかけてゆっくり周って欲しいです。
北円堂の運慶作の無著・世親菩薩立像は白眉。
木造無著・世親立像(もくぞうむちゃく・せしんりゅうぞう) | 「国宝」「重要文化財」 | 文化財 | 法相宗大本山 興福寺
北円堂は春と秋の期間限定での公開なので行かれる際は要チェック!
奈良 東大寺大仏殿
興福寺へ行ったならそこから東大寺大仏殿も是非行っていただきたいです。
東大寺なんて修学旅行で行ったし。というあなた、最近東大寺へいかれました?もし大人になって行っていないのならもう一度再訪をおすすめします。そして東大寺の大仏の圧倒的スケールを大人になった今こそ体感してください!
大きいということはそれだけで崇拝の対象になりえるんだ、ということが実感できます。
もう見仏ファンとなってから東大寺には何度も足を運んでいますが、何度行ってもそのたびに「でけえ」と声が出てしまいます。いつも自分の記憶の大仏の大きさを上回ってくる。様々な巨大建築物がある現代人の僕ですらそのスケールに驚嘆しか無いんですが、当時の人々からしたらそれはもう形容し難い驚きだったことでしょう。
ちなみに東大寺の大仏殿、鎌倉時代と江戸時代に二度焼失していまして、当時は今よりも大きかったと言うからさらに驚きです。
東大寺もまた大仏殿だけでなく、ほかにも見所は沢山。南大門、東大寺ミュージアム、法華堂などなど。正直、興福寺と東大寺だけでゆっくり周ったら1日で終わるのが心配なほどです。
奈良 東大寺戒壇院
見所しかない東大寺のなかで、ひとつだけおすすめするとすれば戒壇院。
これは「見仏記」でも有名なイケ仏がおられるんですが、まあ一度観ておいて欲しいです。ほんとにイケメン。イケメンというか渋すぎ。
戒壇院とはお坊さんの授戒のためのお堂。大切なところなんですね。小さなお堂なんですが、そこに四方を守るように四天王がおわします。なかでもお堂に入って左奥、広目天が素晴らしい。
国宝 東大寺 広目天 | 四天王・十二神将 | Pinterest
観てもらえばおわかりですが、まあシブい。四天王は戦いをされる仏様ですのでそれぞれ武器を持ってるわけですが、広目天はなんと筆。筆ですよ、筆。ペンは剣よりも強しを体現されている。すごい。
ここの四天王は訪れると意外と小さな仏像だと感じます。ここも何度か再訪しているのですが、いつも思っていたより小さく感じる。それほど観た時に実際の大きさ以上の存在感に圧倒されているのかなと思います。天平時代の傑作とも言われますが、天平といえば今からおよそ1300年前。もうその時代にこれだけの造形がなされたことに驚くばかり。
奈良 新薬師寺
東大寺からもほど近く奈良公園の南。興福寺や東大寺と打って変わって小さなお寺が新薬師寺。
かつては東大寺にも匹敵する大伽藍であったようですが、今はちいさなお堂が残るばかり。でもここも素晴らしい。大伽藍もいいですが、こういうひっそりと小さなお寺に魅力的な仏像があるとそれだけでワクワクしてしまいます。
ここには薬師如来坐像とそれを取り囲むように十二神将立像がいらっしゃいます。
御本尊は薬師如来坐像となると思うのですが、目を引かれるのはその周りの十二神将立像。先程の東大寺戒壇院の四天王像と同じ塑像というタイプの仏像です。土で出来ているので造形に柔らかさやうねりが出るのが特徴。
といっても、東大寺戒壇院の四天王像に比べてより、躍動感があります。派手なポーズを決めまくっている感じ。四天王像を静とすればこちらの十二神将立像は動。
みうらさんはこの周りを自分が回ることでメリーゴーランドのようだと評しましたが、そこには動的なニュアンスを感じ取っているんでしょう。
いまは色が落ち白い塑像ですが、当時はきらびやかな極彩色の色付けがなされていたようです。今の技術でその色が再現された映像をそこで観ることが出来ます。
経年変化したシブい仏像もいいですが、当時のきらびやかなピカピカの仏像はどうであったのか観てみたかった。
というわけで奈良公園周辺だけで長くなってしまったので一旦ここで終えます。上記のお寺は有名所ですし、行った方も多いのではないかと思います。僕自身も何度も行ったお寺ばかりです。でも周辺にはまだまだ魅力的なお寺が沢山。奈良だけでもキリがないです。次回は行ってみたいお寺も含めて書いていこうと思います。
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