ボクロニクル / Bo-Chronicle

アラフォーど真ん中、片道切符の人生折り返し。生きた軌跡を残していこうと思います。そんな僕の年代記、ボクロニクル。

 名古屋伏見のミリオン座で映画「99分、世界美味めぐり」を鑑賞

先日、数年ぶりに映画館へ行ったと書いたんですがその時観たのが

「99分、世界美味めぐり」。

マイナーな作品なんだと思うけど、これがなんとも面白かったので感想文。

2016.1.30 公開 映画『99分,世界美味めぐり』公式サイト

監督はトーマス・ジャクソン、スウェーデンの映画でしょうか?

最近北欧の料理界はものすごく盛り上がってますからね。

 

この映画は世界中の超一流のレストランを食べ歩くグルメブロガーが主役の映画です。

日本なんかでも食べログとか一般的になってますが、それの究極の人たちなんでしょうね。

 

以下ネタバレあります。

 

5人のグルメブロガーが出てきて、みんなそれぞれに面白いキャラクターだったんですが、特に気に入ったのは太ったおじさん二人。一人は元レコードレーベルのオーナーで、とにかく口が悪くシェフとケンカになることも厭わない健啖家。もう一人は、元石油会社の重役で現在、世界に109軒あるミシュランの三ツ星店を全て制覇した人。財力もさることながら、胃袋もすごい。まあ結果太ってはいるんだけど。僕もフランスの3つ星レストランで食べたことがあるんですが、質はもちろんですが、量もかなりのもの。特に少量、多皿のコースなんかですと、一皿一皿は一口サイズで、小綺麗に盛ってあるんですがそれが幾つも続けば結構な量になります。決して僕は食が細い方ではないですが、それでもお腹いっぱい、次の日の朝、昼はいらないなんて事になります。とてもじゃないけど昼、夜連チャンで星付きレストランのフルコースなんて無理ですね。この人たちはそれが平気でできる胃袋を持っている。まあ平気ではないのかもしれないけど。お腹はいっぱい、でも美食のためなら無理してでも、って事もあるのかも?

でも、5人のうちのひとりは世界的なモデルさんで、こちらはすらっと痩せていて綺麗な人でした。美食の贅をつくしても太らない人は太らないんですよね。体質なのか、ストイックな自己管理なのか。

体型はさておき、面白かったおじさん二人にはやっぱり哲学みたいなものが、あるいは単純にこだわりみたいなものが確固としてあって(確固としてというか頑固なだけなのか)、その分アクも強いんだけど観ていて面白かったですね。

その点では残りの若い二人にはまだまだ深みとか凄み、みたいなものが感じられなかったな。自分より若かったから、単純に「フン(うらやましい)」、と思っていただけかもしれないけど。

とはいえ世界的に名の知られたグルメブロガー”フーディーズ”たちの影響力は超一流のレストランにとっても無視できない存在になっているそうで。

ブロガーが来店するとなるとかなり力を入れるレストランもあるみたいですね。キッチンが見える特別なテーブルを用意してくれたり。一方でブロガーがなんぼのもんじゃい!と思っているレストランももちろんあるようです。

作中、ある有名なシェフがブロガーのおじさんとケンカをしてました。ある料理を痛烈にこき下ろされて、それについてやりあったのですが。なんとも人間のできたシェフで(やはり一流の人間は人格も一流といったところでしょうか)、しっかりと抑制を効かせながらも言うべき事はきちんと反論していました。この辺り、日本人だとここまで面と向かって(一応)お客には反論できないでしょうね。お客様だから仕方ないとなってしまいそうなもんです。しかし、作る側からしたらたまらないでしょうね、一生懸命作ったものをその人の口に合わないからというだけで、世界中に向けて「まずい」と発信されたら。それも影響力の強い人間に。このシェフの場合、もう既に確固とした地位を築いているお店なのでまだいいでしょうが、これから世に出て行くぞ、といったまだまだ無名の新しいお店だったら結構な痛手だと思うんだけどなあ。

さてさて、この世のうまいものは全て食べ尽くそうという勢いのこのフーディーズ。この人たちは幸せなんだろうか?というのが観ていた時にずっと気になっていた事です。なんというか、食べている時の表情が気になったんですよね。映画だからというのもあるけど、世界中を旅して、場合によっては一人で料理を食べて。結構孤独な時間を過ごしているように思えてならなかったです。美食が喜び、癒しではなく戦う対象、征服欲、自己顕示欲を満たす手段になってないないかと。美食を追い求めているというよりも、追われているんじゃないかと。それはここに登場したブロガーだけに留まらず、世界が近くなった現代人全てにどこかしら当てはまるものかもしれないなとも。情報を追っているようで、いつしか情報にせっつかれているように。

まあともあれ、美しい料理の数々は観ていてどれも素晴らしく、映画としてはとても面白く楽しめました。僕にとっては、映画っていいもんだと再確認できた作品になりました。